4.マイクロ・ナノギャップに生じる非定常イオン輸送現象の解明
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1.液中の局所環境を測定するためマイクロガラス電極の開発
液中の微小空間における電解質濃度やpHを測定するため,先端径を1 μm以下に絞ったガラス管に電解質液と銀塩化銀線を挿入したマイクロガラス電極を作製しました.これにより,流路内部の局所的な電場の測定を実現し,さらには導電率の解析から塩濃度の特定に成功しました.また,ガラス管を2連管(2本のガラス管を束ねたもの)や3連管としたガラス電極を作製し,一方に緩衝液を他方に電解質溶液を充填することで,試料液のpHを定量的に評価することに成功しました.
K. Doi, N. Asano, and S. Kawano, Sci. Rep. 10: 4110 (2020).
T. Kishimoto and K. Doi, ACS Omega 7 (2022) 39437-39445.
T. Kishimoto and K. Doi, J. Phys. Chem. C 128 (2024) 346-354.
T. Kishimoto, T. Ando, and K. Doi, Jpn. J. Appl. Phys. 63 (2024) 106501.
T. Kishimoto, T. Ando, and K. Doi, ACS Omega 15 (2025) 045233.
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2.pH測定を実現するマイクロ・ナノ流路
シリコン酸化膜や石英のナノ流路は電解質溶液中で負に帯電することから,陽イオン(特に水素イオン)選択性を示すことが知られています.そのようなナノ流路を用いて,試料液に含まれる水素イオン濃度(pH)を測定することに成功しました.ナノ流路を介して陽イオンの電流が生じるとき,イオンの濃度勾配に対向する向きに電気抵抗が増加するように見えます.このようなナノ流路特有の現象を利用し,水素イオンの濃度差と電気抵抗の関係から濃度差を特定することができます.
T. Takagi, T. Kishimoto, and K. Doi, Micromachines 15 (2024) 698.
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3.一粒子解析のためのナノ流路

マイクロ・ナノ流路のなかにウィルス程度の粒子が一個通る大きさのオリフィスを作り込み,流れと静電気力によりナノ粒子をオリフィスに誘導して通過するときの電流値の変化から一粒子を電気的に検出することができます.透明な石英ガラス製のナノ流路を用いることにより光ピンセットで粒子をオリフィスに捕捉することができ,その隙間を小さい粒子が通過するときの電気検出に成功しました.これにより,微小粒子の検出精度を向上させることができました.
R. Nakatsuka, S. Yanai, K. Nakajima, K. Doi, and S. Kawano, J. Phys. Chem. C 125 (2021) 9507-9515.
K. Doi, K. Yamamoto, H. Yamazaki, and S. Kawano, J. Phys. Chem. C 126 (2022) 10713-10721.
K. Aichi, T. Kishimoto, and K. Doi, Mech. Eng. J. 12 (2025) 25-00036.
H. Nomura, K. Doi, and S. Kawano, Mech. Eng. J. 12 (2025) 25-00062.
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4.マイクロ・ナノギャップに生じる非定常イオン輸送現象の解明
液体中のイオン輸送現象は,イオンの電気泳動(伝導),拡散および移流からなると考えられます.各現象は,時間と空間のスケールが異なることから,液中に電圧が印加された直後から定常状態に至るまでの非定常現象を調べると,液中におけるイオンの振る舞いの詳細を知ることができます.ナノメートルからミリメートルまでの広範囲で電極間距離を変え,電圧の印加に対するイオン電流応答を理論的に予測し,また実験的に計測しています.電圧を印加した直後に電極表面がイオンによって覆われるために電場が遮蔽され,その後,電極から離れた沖合の濃度場が緩やかに形成されることが確かめられました.
K. Doi et al., J. Phys. Chem. C 118 (2014) 3758-3765.
S. Tanaka, M. Tsutsui, H. Theodore, H. Yuhui, A. Arima, T. Tsuji, K. Doi, S. Kawano, M. Taniguchi, and T. Kawai, Sci. Rep. 6: 31670 (2016).
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5.水溶液における電気流体力学(EHD)流れの生成
マイクロ・ナノ流体デバイスにおける液体駆動方法として電気流体力学(EHD)流れや電気浸透流(EOF)が注目されています.いずれも,液中に外部から電圧を印加してイオンにクーロン力を作用させ,それに引きずられるように液体が駆動される現象です.しかしながら,液中には陽イオンと陰イオンが存在することから,どちらかのイオンが支配的に動くときにだけ流動が発生します.さまざまな方法が提案されていますが,私たちはイオン交換膜を用いてイオンの通り道を分けることにより,水溶液中で2Vの低電圧でEHD流れを駆動することに成功しました.マイクロ・ナノ流路に特有のEOFに加え,さらに大きなスケールでも液体の駆動が可能となりました. K. Doi, A. Yano, and S. Kawano, J. Phys. Chem. B 119 (2015) 228-237. A. Yano, H. Shirai, M. Imoto, K. Doi, and S. Kawano, Jpn. J. Appl. Phys. 56 (2017) 097201. K. Doi. F. Nito, and S. Kawano, J. Chem. Phys. 148 (2018) 204512.
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6.化学反応を伴う分子動力学シミュレーション
(a)解離吸着が起こらない場合と(b)解離吸着が起こる場合
グラフェンのような炭素原子からなる二次元構造の表面は,電子の雲に覆われていると考えられています.このような安定な表面に原子や分子が衝突してもそれらは反発します.一方で,グラフェン表面が少しひずんでいたり,他の元素が添加されたりすると,電子の雲に偏りが生じ,衝突する原子や分子との間に電子の移動が生じて吸着が起こることがあります.一般的な分子動力学シミュレーションでは,電子の移動が考慮されないため電子の移動を伴うような化学反応系のシミュレーションをすることは難しいですが,私たちは,第一原理計算を用いて電子の移動を伴う分子動力学シミュレーションを可能にしました.これにより,部分的に立体的な構造を持つグラフェン表面において,衝突する水素分子が解離してさらに吸着する一連の過程を示すことに成功しました(上図).これにより,物質表面における水素分子の解離吸着や吸着脱離現象をシミュレーションすることができ,水素吸蔵合金などの材料設計に関する応用も期待されます.
K. Doi, I. Onishi, and S. Kawano, Comput. Theor. Chem. 994 (2012) 54-64.
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7.液体微粒化過程の解明と噴霧特性の評価
液滴分裂・液柱分裂などの液体微粒化過程について高速度ビデオカメラ等を用いて可視化することにより、微粒化機構の詳細を探っています.また,噴霧特性を光学的に計測する簡易粒径計測システムの開発を進めています.その他,気液界面を伴う熱流動現象,浮力により駆動される流れと熱伝達などについて,実験・数値計算の両面から研究しています.



